ブログランキングに参加中。
よろしかったらポチッとお願いします!

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

アンクルとの戦い-終 章 前編(もうかんべんしてちょ編)

「その指輪を捨てなければ、この世は闇となる」

 遠い遠い昔、闇の冥王アンクルは密かに、施主を滅ぼす魔力を秘めた“ひとつの指輪”を作り出した。アンクルは自らの邪悪さ、そして施主達すべてを疲弊させたいという欲望を、その指輪に注ぎ込んだのだった。

 月日が流れ、世界は平和を装っていた。エルフ達の美しい歌声が、せせらぎとなり、葉音となり、森に華やかな旋律を奏でていた。
 風の噂によると、アンクルは定年を迎え、その甥は結婚したらしい。一見、めでたい話ではあったが、施主は、その甥の薬指に填められた"指輪"の力を危惧した。施主は知っていた。施主がまだ"施主グレー"と呼ばれていた頃、その"指輪"を燃え盛る暖炉に投げ込んだことがある。するとその"指輪"の周りには今まで見えなかった「嫁(家計)の為なら確信犯的なことぐらいしてもいい((^┰^))ゞ テヘ」とささやく文字が浮かび上がったのだった。

――そして西暦2010年、時はまさに年の瀬を迎え、大寒波が世界を襲っていた。木々という木々が吹雪に揺さぶられた。広く根を張ることができなかった背の高い松が、通りのあちこちでなぎ倒された。電線は雪が積もり、やがて氷となってその重みに断線した。町の至る所で吸水管が凍結し、破裂した――。
 そんな吹雪の轟音の中、施主は夢を見た。それは"滅びの山"。その火口で、「さぁ! その指輪を投げ込むんだ!」と叫ぶ誰かが居た。施主は遠目に全体を眺めながら、この男は誰だろう・・・・。と思った。するとその叫びに応えるように、別の男が振り返り、ほくそ笑みながら、「・・・いやだ」と言った。――アンクル甥だった。

 施主が目を覚ますと、相方が「水が出ない」と訴えた。使い過ぎで水が出なくなることは多々ある。しかしこの頃、それほど使用した覚えがない。施主は貯水タンクの蓋を開けると、初めて目にした光景に息を呑んだ。
「凍っている・・・?」
 貯水タンクの水が凍っていた。正確には水面が凍っていた。こんなことは今まで一度もなかった。施主は、夜半の大荒れがいかにすさまじかったかを思い知った。そしてよくよくタンクを覗くと、凍った水面の下に、貯められた水はなかった。
「なんてことだ! フロートが動かなかったんだ!」
 施主は頭を抱えた。つまり、水が凍るのは通常水面からだ。そして気温の度合いでその厚みも増すだろう。今回の件は、満水だった状態で水面が凍ったことで、フロートが動かず、センサーが満水と判断し続けたのだ。施主達はそれに気付かず使用していた為、水面下で水がどんどん減っていても、井戸から水が供給されることがなく、結果、タンクに水がなくなったという事だった。

 しかし、事はそれだけでは終わらなかった。それだけなら、単に凍った氷を割り、フロートを動かせばいい。そうすることで、井戸のポンプが回るはずだ。施主は、それでも供給されない水に一抹の不安を覚えた。
「まさかこのパイプも凍ってる?」
 要するにフロート近辺の配管のことだ。水面が凍ったのだ。当然だろう。施主はお湯を持ってくると、配管に掛けて解かした。
「おかしい・・・。なぜ出ないんだ?」
 施主は、僅かに離れた軒下に設置してあるシステムユニットを覆うボックスを開け、点検した。
「電源は来ている・・・・。でも満水と判断している?」
 そのとき、施主はハッとした。
「まさか!ここまでも凍ったのか?!」
 まさに青天の霹靂だった。ポンプの水は、このシステムユニットを介して給水タンクへと向かう。そしてあの夜半の寒波は、このユニット自体を流れる水さえも凍らせてしまったのだ。
 通常、満水状態というのはトイレを使用するだけで解かれるので、水が配管の中に留まる時間は知れている。しかし、今回は違った。長い時間、満水と判断されていた為に、その水が凍る条件を与えてしまったようだった。

 施主はユニットに付けられた圧力タンクにお湯を掛けた後、ボックス内に小型の赤外線ストーブを置いた。この季節、氷の融解熱に達する外気にならなければ、最悪の場合何日も解けることがない。施主はいったん部屋に戻ると、相方に言った。
「取りあえずストーブ置いたから、じきに解けると思う・・・・」と。


 しばらくして、給水タンクに水のほとばしる音が聞こえる。システムユニットからフロートまでの、凍っていた全ての氷が解けたのだ。施主はホッと胸をなで下ろすと、ストーブの撤去のため再びボックスの蓋を開けに表へ出た。そして蓋を開けたその時だった! 何ということか! 噴水のように水が飛び散った!
 くっ!
 施主は慌てて電源を切った。晴天とはいえ、この時期に水に濡れるのは厳しい。しかし施主には、状況を確かめる必要があった。電源のon、offを繰り返し、その詳細を見極めた。
 どうやら、凍結による膨張で、圧力タンクの上部に僅かな亀裂を生んだようだ。水が給水タンクへ供給される際、この圧力タンクから漏れだしていたのだ。

 施主がポンプメーカに問い合わせた所、たちまちは問題ないという。
「修理にお伺いしますが、少しお時間下さい。いま手一杯で・・・」
 夜半の大寒波で、住設関係はてんてこ舞いだという。施主はメーカー担当者が来るまで、水が飛び散り、電気系統がショートしないよう亀裂部分にタオルを被せ、タンク周辺に垂れるよう応急処置をした。そして施主が、例の"指輪"の力を思い知るまでには、まだ若干の時間を要した。濡れた衣服が、施主の身をぶるっと震わせた――。

挿し絵(奥が圧力タンク)
ポンプ

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

タラの芽団地

Author:タラの芽団地
タオイスト
ベジタリアン
合氣道々場主

猫は左が紫苑、右が八雲。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム