ブログランキングに参加中。
よろしかったらポチッとお願いします!

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

アンクルとの戦い-第5章

 慌ただしく飛び去る鳥たちの羽ばたきが、早朝の静寂を破った。......そう、やつが来た。
木々はざわめき、辺りに緊張が走った。樹木の切れ間から見える雲は、事の成り行きを見守るかのようにゆっくりとして、そしてどことなく、憂いに満ちていた。

 前日、ポンプのシステムユニットに電源が入らなくなった原因は、電気屋が調べたところ、漏電だった。電気屋は、ポンプ用のブレーカーと地面に機器を当て、「漏電してますね」と言った。
「ど、どこでですか?」
 施主は信じがたい気持ちで尋ねた。場所が家屋なら火事になりかねない。しかしそれよりも、屋内の電気配線をしたのは己自身であり、絶対的な自信があった。電気屋が言った。
「井戸の中ですよ」
「え、い...井戸ですか?」施主はさらに信じがたい気持ちになった。
「どうすればいいでしょう?」
「まぁ、ポンプをあげるしかないでしょうね。どこかの結線に水が入ったのでしょう」

 そんなやり取りに、施主はがっくりと肩を落とした。ポンプを100m引き上げるのは大仕事だ。それだけでも金銭的負担は大きいのに、それに加えポンプ交換ということになると......。施主はやりきれない気持ちで一杯になった。

施主は電気屋に訊いた。
「こういうことは良くあるのですか?」
 すると電気屋は笑いながら応えた。
「ないですよ(^^)」------と。

 そして今、施主の前でポンプを引き上げるアンクル甥。彼は、多くの施主たちをことごとく苦しめるであろうアンクルの魔のパワー(スキル)を吸収したのか、どことなく風格さえ感じる。そのためか、あるいは老いたのか、このときアンクルに以前ほどのパワーを感じる事がなかった。しかしそれは、アンクル族の卑劣な罠に過ぎなかった------。

 やがて、ポンプメーカからの担当者が到着した。ポンプ交換という最悪の事態に備え、アンクル甥が連絡していたのだ。そして引き上げられたポンプを確認すると、持参した電気部位の交換と、電力との結線を始めた。
「モータ部分でよかったですよ。そこは比較的安いんです。実はスクリュー部分の方が高いんです」
 そう言いながら、彼が結線を終え、防水処理を始めると、アンクル甥が声をかけた。
「私がやりましょうか?」
 すると、メーカー担当者はチラっと一瞥し、「いえいえ、私がやりますよ(^^)」と笑顔で返した。その時、「てめェの防水処理が甘いからこうなったんだろうが!o(メ`□´)○ 任せられるか!」という彼の心の声が施主の耳をかすめた。

 通電テストが終わると、ポンプを再度降ろす作業が始まる。このとき、時はまだ午前だった------。

 施主は、この期に乗じて、水に浸かる長さ分だけステンレス管に変えるよう依頼したが、残念な事に1本分足らなかった。そこでアンクルが社まで取りに帰ることとなり、施主とアンクル甥はその戻りを待った。
「この調子なら午前中にすべての作業が終わりそうですね」
 往復で遅くても30分以内で済む距離だ。午前中だけの業務なら、料金は半日分で済む。


 戻ってきたアンクルのトラックに、管が縛られている。アンクルがそれを甥に手渡すと、甥が言った。
「これ違うじゃろ?」

 そのよもや考えもつかない悪魔の一言に、施主の目の前は真っ暗になった。いったい、どこの職人がこのような呪詛をとっさに吐けるだろうか。それはアンクル族が放った一撃の矢だった。アンクル甥の防水ミスと、アンクルのその手慣れた罠の連携に、施主の心は折れそうだった。

「ちごうたかのぉ〜」
 アンクルがそのとき、しれっとしていたかは分からない。それでもいそいそと社へ引き返すと、現場に気まずい雰囲気が流れた。甥は空を見上げ、施主と目を合わそうとはしなかった。そして施主が倣うかのように見上げると、朝の雲はいつしか消え去り、新たな雲が漂っていた。それらは、これで業務が半日で終わる事があり得ないと確信したのか、もう見守る事ができないとばかりに、足早に東の空へと流れていった------。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

タラの芽団地

Author:タラの芽団地
タオイスト
ベジタリアン
合氣道々場主

猫は左が紫苑、右が八雲。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム